訪れる場所
甲府市遊亀公園付属動物園
訪れる人
五味仁・洋子
遊亀通り沿いのシンボルといえば遊亀公園。いつでも懐かしさが漂うこの動物園は、あと2年後に節目の100周年を迎える。城東通り沿いの五味醤油は来年150周年。遊亀公園も五味醤油も甲府の老舗同士だ。発酵兄妹の五味仁さんと洋子さんがはじめて二人だけで遊亀公園を訪れる。動物たちとふれあった後には、お茶を飲みながら思い出話に花を咲かせる。


世代によっては「太田町公園」の名前で通っている甲府市遊亀公園付属動物園(以下、遊亀公園)は、2019年に開業100周年を迎える日本で4番目に古い動物園だ。公園部分では、おじいさんたちが囲碁に興じていたり、家族連れが噴水近くでのんびりしていたりと、この場所が地域の人々に愛されていることが伝わってくる。
動物園に入って最初に出会う動物は、なんと象のテル。いきなり遊亀公園のシンボルとご対面。しかも、テルの檻は後ろの民家の2階から見放題というサービス精神旺盛な位置関係に、思わず笑みがこぼれる。レッサーパンダもマレーバクも、手を伸ばせば触れられそうな距離に。そんな想像以上の近さで動物たちを感じられる街中の動物園なんて、全国を探してもそう見つからないだろう。

ちょいと、動物園とお茶の思い出話を
 

新録が芽吹きはじめた4月の中頃、遊亀公園を訪れたのは五味仁さんと妹の洋子さん。発酵兄妹として知られる二人は、家業の味噌の製造・販売、味噌づくりワークショップなどを通じて、発酵文化を広く深く、そして、楽しく伝えている。

遊亀公園は会社と実家から自転車で10分ほどの距離にある身近な存在。幼い頃は洋子さんの姉の文子さんも一緒に、両親に連れられてこの場所で過ごしたというが、仁さんと洋子さんの二人だけで遊亀公園を訪れたのはこの日がはじめて。職場に戻り、緑茶でひと息つきながら、遊亀公園での時間を振り返ってくれた。
「僕は息子と娘を連れて、新遊亀温泉とハシゴしたり。あのコンパクトさで遊園地があるのもいいですよね。昔は岡島百貨店や山交百貨店の屋上にも遊園地があったそうだけど、唯一残っている場所なんじゃないかな。動物園に入らなければ遊園地に辿り着けないという導線もすごい(笑)」
「私は幼稚園の遠足以来かも。ここで紙芝居を観たのを憶えていますね。改めて、動物との近さにびっくりしました。レッサーパンダとかヤギとか脱走しないかなって(笑)。動物園ってガラス越しに動物を眺めたりするから、私たちと動物たちが同じ空気を吸っているのはなんかいいな」

耐熱性の高いビジョングラスに注がれたお茶を口に運んでいくと、話題は変わってお茶にまつわる五味家のエピソードに。
「敷島のおばあちゃん家に行くと、今でも漬け物と熱めの緑茶がセットで出てくるんですよ。必ず爪楊枝で食べて、冬は白菜、夏はキュウリという感じに。私はそれがずっと当たり前だと思っていたのに、友達の家で甘いものと緑茶が一緒に出てきたのはショックでした(笑)。おばあちゃん家では大人がお茶を淹れてくれていたのに、気づけば私も茶を淹れる歳になったんだなって」


実家では、朝起きると必ず誰かが緑茶を淹れる習慣がある。急須は南部鉄瓶を使うという本格志向。「手入れが必要な南部鉄瓶は絶対にその日のうちに洗わないとダメ」と明かす洋子さんも、気づけば南部鉄瓶を買って使うようになったという。きっと家族の影響なのだろう。

ちなみに、五味醤油の10時と15時の休憩にもお茶を出しているのだとか。仁さんは「寒い冬に工場で飲むお茶は最高」と話す。
「冬の工場は体が冷えるから、ポットでお湯をつくって熱いお茶を淹れて、一杯目を飲む瞬間があったまる。僕は根っからの労働者なんでしょうね。仕事の後の一杯も、ビールよりお茶のほうが染みるんだよな」

来年、五味醤油は創業150周年を迎える。味噌と醤油づくり、その束の間のひとときには、今も昔もお茶が彩りを添えていたに違いない。

PROFILE

五味仁・洋子
五味家に続く五味醤油の6代目社長と企画・広報担当。「最近、甲府の街が楽しいです。昼の何気ないお茶の時間とか、銭湯に行く余白を大事にしたいと思っていたところです」(仁)。「我が家で一番丁寧にお茶を淹れるのは父親。暮らしのなかで、ほんの数分ゆとりをもって心を落ちつかせたいものです」(洋子)。
yamagomiso.com

取材・文:加藤 将太 写真:砺波 周平

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